それを言っちゃあおしまいよ

それを言っちゃあおしまいよ

毎週日曜日の朝は、TBSの「サンデーモーニング」というワイドショーを見ています。1987年に始まったそうですから30年以上も続く長寿番組。

基本的にはニュース番組で、政治、経済、社会、文芸、スポーツなど各界に精通したコメンテーターを招き、関口宏さんの進行で1週間のニュースを振り返る内容です。

解説や分析に見栄えの良いチャートや動画などのデジタルを敢えて使わず、黒板に手書きしたり、段ボールや画用紙で作った模型を用いたりと、アナログ演出にこだわっていてなかなか面白い。

さて、この番組に準レギュラーメンバーとして定期的に登場するジャーナリストがいます。ここではA氏と呼ぶことにしましょう。

このA氏、実は私がロンドンで子会社リストラの陣頭指揮をとるという過酷なミッションの真っ只中にいる頃、親会社つまり本社の社外取締役を務めていたのです。

私はロンドン、A氏は東京ベースですから直接お会いすることはもちろん、エレベーターで遭遇するといったこともありませんでした。

ただし、当時ロンドン子会社のリストラは重要な経営課題でしたので、取締役会でも頻繁に議論されており、その議事録は私にも回覧されていました。

そこにはA氏の発言もつぶさに記されているのですが、「イギリス人が日本人をリスペクトするはずなどない!日本人の責任者など置かずにさっさと現地人トップに切り替えるべきだ」という主旨の発言をしたと知り、怒り心頭に発しました。

それに対する他の取締役たちの反応も「おっしゃる通りです」という感じ。なんとも情けないではありませんか。著名人の発言だけにその場で反論するのが憚られたのでしょうか…

なぜ「怒り心頭」なのか。確かに「欧米人は日本人などリスペクトしない」のは事実かもしれない。でも、日本人がそれを言っちゃあおしまいです。

日本発のブランドとして世界の市場に打って出ようとする会社の取締役会で、日本人が自ら進んで日本人を卑下してどうするのでしょうか?

A氏は歯に衣着せぬ物言いでも知られる方とはいえ、私は「同胞を貶める発言」に強い怒りを覚えたのです。現場の最前線にいましたのでなおさらでした。

ところで、日本人の大富豪が宇宙旅行に行って帰ってきたことが話題になったとき、サンデーモーニングにA氏が出演していました。

その時のA氏のコメントはとても良かった。「宇宙旅行に行くカネがあるならコロナ対策に寄付でもしてくれればよいのに」と。歯に衣着せぬ物言いは今も健在のようです。