9.11に思う 

9.11に思う 

アメリカ同時多発テロ事件から20年。あの日から始まった「米史上最長の戦争」は先月末アフガニスタンからの米軍撤退をもって、その終結が宣言されました。

事件当時、私はドイツのデュッセルドフルに駐在していました。9月11日火曜日、この日は午後から、パリにあるヨーロッパ地域本社の幹部が来独しての打合せでした。

ライン川沿いにあるオフィスビルの2階会議室。何について協議していたのか、今ではすっかり忘れてしまいましたが、開け放していた窓の外から人のざわめく声がきこえてきました。

そこで、ふと狭い通りを挟んで向かいにあるオフィスに目をやると、部屋の一角にスタッフが数人、肩を寄せ合ってTVを食い入るように見ています。

この周辺のビルはなぜか全面ガラス張りというスタイルが多く、当社のオフィスビルもそうですが、ブラインドを閉めない限り、お互いに中の様子は丸見えです。

まさかワールドカップサッカーのライブ中継でもないかぎり、このような光景はみたことがありません。第一いまは昼休み時間でもない。これは何か大きな事件があったのでは?と思いました。

「何か大変なことが起きたのかもしれませんよ!」私は向かいのオフィスを指さしました。とりあえず会議は中断。オフィスのTVをつけるとBREAKING NEWSが流れていました。

最初は、何が起きたのかさっぱりわかりませんでした。流れる映像がまるで、特撮映画をみているようで現実には思えなかった。

やがて、詳細が報じられるにつれて、背筋が凍るような恐怖感に襲われたのを覚えています。

それからの数か月間、東京本社からの通達で海外出張は自粛ということになりました。東京本社からの来訪者は激減。日本人駐在員も飛行機に乗らないようにとのこと。

驚いたのは、欧米企業の対応です。報道をみる限り、数日後に彼らは通常のオペレーションに戻っていました。出張自粛など誰もしていません。

ドイツ人の販売担当副社長も「飛行機に乗らないと仕事にならないよ」と言って、翌日からまるで何事もなかったかのようにルフトハンザで飛び回っていました。取引先もみな普通に動いているとのこと。

このとき、私は日本人と欧米人の危機に対するとらえ方や対応の仕方の違いを、身をもって感じました。

きわめて合理的にリスクとリターンのバランスを計算し行動する欧米企業に対して、なんとなく様子をみながら、やや情緒的にものごとをとらえる日本企業。政府のお達しや他企業の動きなどを見ながら空気を読んで行動します。

どちらがいいとか悪いとは一概に言えませんが、結果的には欧米企業に軍配が上がったのではないかと。日本企業はこの間に商機を逸した場面が少なからずあったように思います。

ところで、あの事件から数年後、我が家に待ちに待った第2子が誕生したのも9月11日でした。

毎年この日は私にとって、テロの犠牲者への追悼と2人目を授かったことへの感謝を捧げる特別な日です。