少し薄目を開けて無表情に横たわる父を見つめていると、医師が「これから、どなたかご家族の方はお見えになりますか?」と。
あいにく今から病院に来られる者はなく、私だけが立ち合う旨を伝えると、死亡確定のための診断がはじまりました。心肺は停止、瞳孔の反応もありませんでした。
一旦病室を出てから待つこと1時間。身体に付いていた管などは全て外され服装も整えられた父と病室で再び面会。
あらためて顔をよく見ましたが、あまり苦しまずに済んだように見えます。父の髪に触れながら「お疲れ様、今までありがとう」と言葉をかけました。
しばらくすると、白衣を着た男性が二人、遺体を霊安室に運ぶためのストレッチャーを押しながら現れました。病院に常駐する葬儀屋さんのスタッフです。
病棟の看護師にも付き添われて地下の霊安室へ。ここからは全て葬儀屋さんにバトンが渡されます。
遺体の納棺が終わると、さっそく葬儀の打ち合わせ。気持ちの整理もつかないうちに、具体的な段取りの話をしなければならないのは本当に辛いものですね。
こういうシステムになっていることは知っていましたが、頭でわかっているのと実際に体験してみるとは随分違いました。
面談室に案内され椅子に腰かけたところ、目の前に大きなカレンダーが掛かっていました。よく見ると、5日、11日、17日、23日、29日が緑色のマーカーで囲ってあります。
いったい何の印だろうと思っていたところに、先ほど白衣でストレッチャーを押してきた男性が今度はスーツ姿で現れました。
時刻は午後10時半を回っていました。まずは日程の打合せ。先ほどの緑色マーカーの日は「友引」で火葬場がお休みということを知りました。<父の旅立ち(3)に続く>