バギー から車椅子へ

バギー から車椅子へ

母の「健診の付添い」から約3週間が経過した昨日。今度は妹と二人で面会に出向いた。午前11時過ぎ、施設の玄関で車椅子の母と再会。妹は7月以来の3か月ぶりだ。

穏やかな秋晴れ。前回は屋上庭で話をしただけだったが、今回は建物を囲む緑豊かで広大な敷地の中をまわった。

母は表情こそ乏しいが上機嫌で、金木犀香る風が気持ちよさそう。10月後半だというのに気温は25度近く、途中でヘルパーさんが掛けてくれたひざ掛けを外したくらいだ。

今から15年前は娘のバギーを押していた自分が、今は母の車椅子を押す。生まれたばかりで言葉ができない娘に話しかけた時と同じように、言葉を忘れてしまった母に話しかける。

歳を聞いたら「50歳」と答えたけれど、母の生まれ育った甲府のことを尋ねれば「小さい頃のことを思い出すよ」とつぶやいた。どんなに認知症が進んでも幼い頃の記憶は消えない。

面会時間の30分はあっという間に過ぎ、玄関に戻る。「元気でね!また来るね!」と呼び掛けるも無反応。ヘルパーさんに促されてようやく視線が合った。「わが子」を母は誰だと思っていたことやら。