父の旅立ち(3)

父の旅立ち(3)

葬儀は直葬と決めていました。父と具体的な話をしていたわけではありませんが、父ならまちがいなく「それで十分だ」と言ってくれるはずです。

自分の事よりも、まず人のことを優先するようなところのある、控えめで優しい父でした。そもそも派手な式典や儀礼なども好みません。

それに年齢的にも八十を超え、既に親戚縁者の多くも他界している。しかもコロナ禍です。そのため、打合せは手短に終わり火葬式は堀ノ内斎場にて13日午後と決まりました。

迎えた当日は穏やかな晴天。参列者は妹と私のふた家族のみです。認知症の母には父の逝去を伝えていません。

定刻になると棺が運び込まれ、中に眠る父との最後の面会。持参した花や父の好きなお菓子、実家で見つけた古い競馬新聞(競馬が大好きでした)などを一緒に納め、荼毘に付されました。

遺骨と共に自宅に戻り、献杯。娘のピアノを台にして、そこにお線香を立てたり、簡単な装飾を加えたりと、手作り感満載の祭壇を準備。皆で簡単な食事をしながら、父の思い出話に花を咲かせました。

通夜も葬式もなし、お坊さんも登場せず、戒名もつけません。極めて簡素かつ少人数の集いではありましたが、近しい人たち全員が心を込めて父の旅立ちを見届けることができたと思っています。

納骨についてはまだ何も決めていません。これから、ゆっくり考えようと思います。母からは「自分が死んだら海に散骨してほしい」と言われているのですが、父とはこうした話しをする機会がありませんでした。

ところで、人が亡くなりますと対応しなければならない「手続き」が容赦なく押し寄せてきます。既に私も忙殺されはじめましたが、なかなかシンドイですね。こちらについても、もう少し簡素に出来ないものか…。

インターネットで何でも情報がとれますので税理士や弁護士に高いお金を払わずとも、何とか頑張って自力で出来そうですが、やはり相応のエネルギーと基礎知識は不可欠です。

幸い、几帳面だった父は、自身に関する資料をきちんと残して置いてくれましたので大助かりです。最後の最後までありがとう。