大衆の狂気(ダグラス・マレー著)

大衆の狂気(ダグラス・マレー著)

人種差別撤廃の運動や、女性の権利獲得に向けたフェミニズムくらいまでは、私もそれなりに理解・共感できます。

しかし、昨今のLGBTに関わる社会運動に至っては正直なところ違和感を覚えてしまう。上手く言えませんが、どこか「度を越している」ように思うのです。

そのような折、こうしたアイデンティティ・ポリティクスの狂気について解説してくれる本著に出合い、「もやもや」がずいぶん解消されました。

例えば、女性と男性、黒人と白人、同性愛者と異性愛者…これまでも対立してきたけれど、いつも根底には「どうすればお互いに仲良くなれるか」というスタンスがあったと。

なるほど、私が「度を越している」と感じるのは、そこに「仲良くなろう」というスタンスを感じないからなのかもしれません。

SNSの普及も相まって、特異な思想が大きなうねりとなって暴走し、社会に強い圧力をかける。その結果、社会のルールや人々の行動が急速に変化する…。

対立や分断といった言葉で語られることが多くなった現代社会。私たちは今後どう向き合ってゆけば良いのかについて示唆に富む一冊です。(徳間書店)