「過剰反応」社会の悪夢(榎本博明 著)

「過剰反応」社会の悪夢(榎本博明 著)

クレーマーやモンスターペアレンツ、SNSでの誹謗中傷…。「何もそこまで言わなくても」とか「それはどう考えても言いがかりでしょ」と思えるような事例は後を絶ちません。

「ちょっとしたことで大騒ぎしたり、すぐに感情的になったりと、どうみても過剰反応だろうと思わざるを得ないケースが目立つ」と榎本氏。

同氏は本書で「過剰反応社会」を象徴する様々な事例を参照しながら、こうした過剰反応がおこる心理メカニズムや社会的背景を解明、分析し、どうすればそこから脱することができるのかを探っています。

私が最も印象に残ったのは「人から嫌われたくないという思いが強い」と題する一節。

過剰反応の背景には、対人不安の心理が絡んでいることもある。人からどう思われるかが非常に気になるため、人の目に過剰に反応するのである。

『嫌われる勇気』という本が大ヒットしたのも、「嫌われるのが怖い」という思いを密かに抱えている人が非常に多いことのあらわれといえる。

これはまさに自分のことだと思えたのです。自分も間違いなくこうした対人不安の心理を持っていました。

ということは、自分は過剰反応しない人間だと思ってはいても、知らず知らずのうちに対人不安から過剰反応を起こしていたかもしれません。

本書の出版は2015年ゆえコロナ禍にまつわるトピックスはありませんが、今あらためて読み返してみると、「自粛警察」のように歪んだ正義感が跋扈する素地は十分にあったことなどもよく理解できます。

何事にも過剰反応してしまいがちな昨今、「悪夢」から一刻も早く目覚められるように いま一度心を落ち着けて過ごしたいと思います。(角川新書)