いわゆる「ビジネス書」を読みあさっていた時期があります。企業のサクセスストーリーからノウハウの紹介、専門用語の解説といったものまで ものすごい数が出版されていますね。
課題や悩みを解消したくて読むのですが、たいていの場合そこに解決策は見いだせずに終わります。結局、自分の頭で考えて行動しなければダメだと悟る。この繰り返しでした。
本当は「歴史の風雪に耐えてきた“古典”を読むことが大切」なのでしょう。でも、古典はとっつきにくいし難しい。なにせ、その読み方を解説する本まである。
そこで、どうしても「口当たりのよい」と申しましょうか「やわらかめ」のビジネス書を手に取ってしまいます。
だからと言って「ビジネス書」を読むのが悪いとは思いません。良書もたくさんありますし 解決策とはいかないまでもヒントを与えてくれることはありますので。
そこで今回は、最も印象に残っているビジネス書の中から「大逆転!コンチネンタル航空奇跡の復活」をご紹介したいと思います。
この本に出会ったのは今から20年も前のことです。
「最低のエアラインからNO.1企業へ。憎み合う労使。乗客からは罵声の嵐。三度目の倒産の危機。リストラに怯える日々。こんなボロボロの会社を救おうと、一人の男が立ち上がった。」
どん底の航空会社を救った著者のゴードン ベスーン氏が何を考えどう行動したのか詳細に語られています。
圧巻は経営目標の設定方法です。売上や利益を目標値にしなかった。
航空会社の社会的な使命は何かという本質的な理念に戻り、そのミッションを達成するための目標値を誰にでもわかる形で、しかも極めてシンプルに設定したのです。
この絶妙な目標設定が奏功し見事に経営再建を果たすという物語。これを読んで私もこの方法を自社で応用できないかと考えました。
私は当時 東京に本社のある日本の化粧品メーカーからドイツ現地子会社に出向し 経営に携わっていました。
幸い業績は順調だったので、この「絶妙な目標設定」を 経営再建ではなく事業発展に応用できないかと。
ところが、仲間たちとも情報共有し議論を重ねるも 残念ながら具体的なアイデアは浮かびませんでした。
航空(運輸)のように機能価値(人や物を運ぶ)をメインにするビジネスと、化粧品のようにむしろ機能価値(肌を健やかに保つ・彩る)よりも情緒価値(ブランドイメージ)が前面に出てくるビジネスの違いでしょう。
そう簡単にはゆきませんでした。
ドイツのお客様に当社製品の質の高さを体験していただく。ひいては日本のものづくりは電気製品だけではないことを知っていただく。ひとりでも多くのお客様に笑顔になっていただく。
こうした想いをベスーン氏のように「絶妙な目標設定」に落し込む術はいまだに見つけられていません。(日経BP社)