氷川清話(勝海舟/江藤淳・松浦玲 編)

氷川清話(勝海舟/江藤淳・松浦玲 編)

勝海舟はご存知の通り幕末から明治維新に活躍し、江戸城を無血開城に導いた幕臣、政治家です。この本は、晩年に海舟が赤坂氷川の自邸で語った談話集。

これまで、さまざまな人物によって内容の吟味、編集がなされてきました。私が読んだのは江藤淳・松浦玲の編集(講談社学術文庫)によるものです。

時事問題に関する談話が多く、歯に衣着せぬ人物評や痛烈な体制批判など、現代社会にも通ずる大変興味深い内容です。

私は学生時代に「竜馬がゆく(司馬遼太郎著)」を読んでから、勝海舟という人物がとても気になっていました。坂本龍馬が薩長同盟から倒幕、明治維新という偉業に東奔西走するなかで、幕府側の重鎮として登場します。

あれから15年近くが経ち、たまたま海舟ファンの職場の元上司が勧めてくれたのが「氷川清話」でした。当時の私はリストラ関連のかなり辛いミッションを与えられ、その重圧に押しつぶされそうになっていたところ。

「切りむすぶ太刀の下こそ地獄なれ 踏み込み行けば後は極楽」という歌を引き合いに出して私を激励してくれました。氷川清話という海舟の談話集にこの歌が載っているので一度読んでみてはと。

昨年10月22日の投稿「とにかく出勤することです!」の最後で触れた「短歌」とはこの歌のことです。「余裕と無我」という章にこの歌が紹介されています。

他にも、厳しい商談や難しい交渉などに挑むときに役に立ちそうな名言が満載。修羅場をどのような心持で乗り越えてゆけばよいのかという点に関して示唆に富んだ内容です。

無神経は強い、仕事をあせるな、意気地のあるなし、必ずこれのみと断定するな、他人に功を立てさせよ、などなど。

本人の語った言葉がこうして後世に語り継がれていることに感謝。私にとって人生のよき羅針盤の一つです。