試用期間の乱用はダメ

試用期間の乱用はダメ

会社で人材を採用する場合、雇用契約を結びます。その際、雇用期間という欄に、例えば正社員なら「期間の定めなし(試用期間6か月)」パートタイマーなら「●年●月●日から〇年〇月〇日(試用期間3か月)」といった具合に試用期間を明記するのが一般的です。

さて、この「試用期間」を誤解している経営者が意外と多い。試用期間は「その人の能力を見極める期間であり、もし気に入らなければ、契約を無条件で解約できる、つまりクビにできる期間」と誤解しているのです。

通信販売で購入した商品ではあるまいし、雇用契約の場合は人材が気に入らないからといって無条件に解約することはできません。人間はモノやサービスとは違うのです。無料お試し期間などは基本的にあり得ない。

先日、かつてご縁のあった会社のトップから、正社員として新たに採用した人材がお気に召さないということで「彼を〇月〇日までに解雇したいのだが…」との相談を受けました。なぜその日なのかと問うと、その日で試用期間が切れるからだと。

そこで私は「無断欠勤や学歴詐称、あるいは業務上の重大な不祥事など、社会通念と照らし合わせても解雇もやむなしと言えるような合理的な理由がありますか?」と尋ねました。

ところが、そういったものは一切なく、彼の仕事のやり方が気に入らない、合意した給与が高すぎた、といった極めて不合理な理由ばかり。そこで、私は試用期間とは何かについてその方に説明することになりました。

試用期間は「解約権の留保が付いている」という状態だけのことであり、解約する場合には「客観的・合理的な理由」が必要である点では何ら変わりがありませんと。

すると今度は、「では、能力が低いことが判明したのだから賃金を減額したい」と言い出しました。

私は「それもできません。賃金改定は、全く新たに契約を結びなおすことになるわけで、それなら、まず合理的な理由をもって解雇しなければならない。」とお伝えしました。

留保されている解雇権を行使するまでには至らない人に対して、それを飛び越えて、賃金改定を行うのは筋が通りません。

つまり、「賃金減額を了承しないと本採用しないぞ」などといった「後出しジャンケン」は完全にアウトですと。

ちなみに、渦中の彼は無事雇用契約を継続。パフォーマンスが低いと評価していたのはどうやらトップのみで、組織の他のメンバーからは大いに慕われ、一目置かれるような存在になっているそうです。

「人を大切にする」ことは経営の基本中の基本ではないでしょうか。同社トップの改心を期待したいところです。