新疆ウイグル自治区は社会人になって3度目の海外出張先。今から31年前の夏、中国ではまだ人民服を着て町を自転車で往来している人が少なからずいた頃の話です。
最近は中国によるウイグル族弾圧問題などもあり、「新疆」の名は新聞やテレビでよく聞くようになりましたが、当時は殆ど聞いたことがない場所。
ただ、あの頃は『NHK特集 シルクロード』という総合テレビのドキュメンタリー番組が話題になっていまして、新疆といえば「シルクロードの世界」というイメージは辛うじてありました。
「地の果て」「陸の孤島」「どこまでも広がる砂漠」等々、殺伐とした風景しか浮かんできませんでしたけれど…。
ところで、どうして私が「地の果て」に出張することになったのか?
当時、私は食品会社の購買部門でトマトや果汁原料の買い付けを担当していました。世界各地から直接貿易、あるいは商社を介した間接貿易での調達並びに在庫の保管・管理です。
『新疆ウイグル自治区は乾燥気候ゆえ日照時間が長く、病害虫の被害も少ないので良質のトマトが獲れる。それに人件費も安くトマトペーストなどの加工品も安価。トライアルでこの地域で製造されたペーストを数トン購入してトマトジュースの製造などに試用し始めたが工場や研究所の評価は悪くない…』
こんな説明を上司から受けていた私ですが、それまでは在庫表に「トマトペースト(新疆)」という名前が出てくるのをときどき目にするくらいで特に気にもせず。ちなみに、調達はM商事が仲介していました。
ある日、そのM商事から上司に「例の新疆の加工業者が新しい生産ラインを導入したので、現場を見て評価してほしい」との依頼があったらしく、私に白羽の矢が立ったというわけなのです。(明日につづく)