タクラマカン砂漠をゆく(3)

タクラマカン砂漠をゆく(3)

いよいよK氏との珍道中が始まりました。北京までのフライトは順調。商社マンのK氏にとっては大阪出張するくらいの感覚でしょう。

一方でメーカー社員の私は、生まれて初めての中国ということでやや興奮気味。しかし、ここから先はさすがのK氏も、もちろん私も「非日常」の体験が続きました。

ウルムチ行きの乗客が次々とタラップを昇ってゆきます。皆さん物凄い量の荷物を両手に抱えて。真っ黒に日焼けし、顔に深いしわが刻まれたオジサンやオバサンたち。段ボールやら麻袋やらを手荷物として持ち込んでいる人もたくさんいます。

行商人なのか、個人的に北京まで買い出しに来たのかよくわかりませんが、機内に入ると人と同じくらい手荷物が乗っているように見えます。機体はソビエト製の旅客機Tupolev(ツポレフ)。

騒然とした機内でようやく座席にたどりついた私たちは、手荷物を膝の上にのせて腰かけ、少し楽な姿勢になろうとリクライニングレバーを引きました。

すると、壊れているのか背もたれがうまく動かないと思いきや、なんと、真後ろに座る乗客の荷物がブロックしてリクライニングを阻んでいました。

そうこうするうちに、チャイナドレスを着たキャビンアテンダントが小さな紙パックジュースと扇子を配り始めました。ジュースはともかく扇子を貰うのは初めて。エンジンも始動しはじめたようです。

同時に機内の空調も動き出したのでしょう、シューッという音がします。すると吹き出し口から蒸気が出て来て機内は真白。温泉じゃあるまいし…。

早速もらった扇子で周囲をあおいで視界確保。「扇子を配ったのはこのためだったのですかね~」思わずK氏と顔を見合わせて苦笑い。

「北京でこの調子ですから、ウルムチでは何が起きることやら…」一抹の不安を乗せて私たちのTupolevは北京を離陸しました。(明日につづく)