10円の領収書を持ってきた新入社員

10円の領収書を持ってきた新入社員

この新入社員、実はかつての私です。

食品会社の研究所に配属されて間もないころ。普段使っている器具に不具合が生じたので、原因を調べたところ、どうやらネジが1本外れてなくなってしまった模様。

上司に相談すると、近所にネジ専門店があるので、そこで買って来なさいと。そこにいけば ほとんどのネジが手に入るし、ばら売りもしてくれるという話です。

へぇー、そんな便利な店があるのか…。さっそく業務を中断して外出。車で3分くらいのところにそのネジ屋さんがありました。

店内はものすごい数のネジがところ狭しと並んでいました。お店のご主人らしき男性に持ってきたネジを見せて、「これと同じネジを1本下さい!」。

すぐに見つけてくれ、「1本だけでいいのですね?10円になりますが…」と。そこで、新入社員の私は10円硬貨を手渡すと「領収書を下さい!」と一言。

「えっ? あぁ、はい…」ご主人の表情が一瞬引きつりましたが、間もなく「ネジ代金10円」と書かれた手書きの領収書を持ってきてくれました。(これでは領収書そのもののほうが高いくらいですね)

職場に戻って「ネジ買って来ました!この領収書はどうのように処理したらよいですか?」と10円の領収書を上司に見せました。

その時、タイミングが良いと申しましょうか、悪いと申しましょうか…。同じグループの先輩が、出張時に徒歩10分で行ける距離をタクシーに乗って精算申請をしていたことが発覚し、叱責された直後だったのです。「この距離なら、歩け!」と。

わずか10分の距離をタクシーで移動する者がいるかと思えば、ネジを1本だけしか買わずに10円の領収書をもらってくる者もいる。「うちのチームはユニークな人材が揃っていますね」と、両極端な2人の部下をもった上司は苦笑いでした。

10円なら自腹を切っておいたほうがスマートだったなぁと思う反面、たとえネジ1本でも経費は経費。金額に関係なく精算すべきですね。ネジ屋のご主人にはご面倒をお掛けしましたけれど。

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かくと

かくと

「荻窪ラジオ」の神木各人(かみき かくと)です。私は国内外で33年間のビジネスマンライフを終え、今は荻窪を拠点にフリーランスとして活動中です。「荻窪ラジオ」では、私のこれまでの経験や、日々の暮らしで考えたことなどを「オンエア」。「読む」ラジオとしてお付き合いいただければ幸いです。

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