飯田線完乗(2) 

飯田線完乗(2) 

極言すれば「ボーっとするため」の飯田線乗車。豊橋6:00発の天竜峡行きに揺られること1時間。山が深くなってきた。渓谷沿いを走る車窓は絶景の連続。

標高が上がってきたのか、耳がツーンとする。短いトンネルが断続し、その合間に、深く鋭く刻まれた谷底を流れる渓流が見える。

天竜峡で飯田行に、飯田で上諏訪行に乗り継いだ。この区間はずっと広々とした台地が開けていた。飯田、伊那と大きな町があり人家も多い。

午前11:48辰野着。飯田線はここが終点。乗務員は交代し、列車はこのまま中央線に直通運転する。

発車ベルが鳴り、引継ぎを終えたばかりの車掌がドアを閉めた。乗りそびれた女子高生が二人、悔しそうな表情で改札口から待合室に戻ろうとしている。

それを見た車掌は再びドアを開けたが、列車に背中を向けた二人は気づいていない。

それを見た駅員が、二人に手で合図する「ドア開けてくれたよ!」と。急いで回れ右した二人が笑顔で車内に飛び込んで来た。

ほのぼのとした風景だった。自然が織り成す景観も素敵だが、人々が紡ぎ出す日常の心温まるワンシーンも美しく心に響く。