I-pad差し上げます

I-pad差し上げます

I-padが日本に上陸したのは今から10年ほど前だったと思います。私の職場では、役員の一部にI-padが支給されスケジュール管理などに使い始めていましたが、一般社員にとってはまだ縁のない機器でした。

オシャレでカッコいいなぁと、ときどき家電量販店で見たり触ったり。しかし、ガラケーを使っていた身には高嶺の花。

ちょうどその頃、ロンドンに本社があるグローバル企業B社とのあいだで日本市場における販売提携の話が持ち上がっていました。

英国に駐在していたこともあり、私はその提携交渉メンバーとして、国内部門との橋渡し役を担うことに。

さっそくB社社長以下数名のプロジェクトメンバーが来日することになり、東京でキックオフミーテイングの開催が決定。当方は、国内、海外各部門の担当役員ほか総勢10名ほどのメンバーで臨むことになりました。

そして当日、颯爽と大会議室に入ってきたB社のチーム。

女性社長を先頭に、風貌も肌の色も異なる4名が続きます。自己紹介と名刺交換。英国人に加え中国人、スペイン人ほか。みなさん流暢な英語を話します。

「グローバル企業」を自負する我が社でしたが、ダイバーシティーが進んでいる彼らの姿を目の前に、国内部門メンバーは緊張が隠せない様子です。

両社トップの挨拶が終わり、いよいよ自社紹介のプレゼンテーション。まずはB社から。I-padがケーブルに繋がれ前方のスクリーンに資料が映し出されました。

同時に、なんと、いつの間に持ち込んでいたのか I-padが 我が社の参加メンバーに一人一台 配布されたのです。どうやら、15台ほど準備してあったようで、まだ数台が残されていました。

その場にいた10名の日本人はぎこちない手つきで懸命にスワイプなどして、各自ようやく前方スクリーンと同じ画面に行き着きます。

手元でスライドが見られるうえに、より詳しいデータについては「このファイルをタップしてください」などと、まぁとにかくスマートなプレゼンです。

質疑応答も含めて無事終了し、ではI-padを回収!と思いきや、「皆さんに差し上げます ! 」と。これには度肝を抜かれました。予備分も置いてゆくので好きに使ってくれと。もちろん充電器もセットで。

新品I-pad15台を惜しげもなく贈呈というわけです。

欧米人は本当にプレゼンがうまい。つくづくそう思います。I-pad贈呈も演出の一部でしょう。さすがです。

でも、中身まで相応に優れているのかどうか。そこは見た目に惑わされず冷静に見極めるべきでしょう。

ビジネスにおいてプレゼンが下手だと日本人はよく言われますが決して卑下する必要はありません。プレゼンは多少劣るかもしれないが仕事ぶりにかけて日本人は世界トップレベルですから。

さて、B社の女性社長はミーティングの翌月辞任。A社にヘッドハンティングされたそうです。なんだそれ?と思いました。ちなみに、販売提携のほうは成約したものの、数年で行き詰まり 解消の運びとなりました。