海外駐在員の「婦人会」

海外駐在員の「婦人会」

最初の海外駐在地はドイツのデュッセルドルフ。拠点を置いている日系企業も多く、欧州屈指の日本人コミュニティーがあります。

在留日本人の数は当時も5千人以上、日本人学校の生徒数は800人くらいだったかと。日本庭園を有したお寺まであり、大晦日には除夜の鐘が鳴るほどでした。

企業各社の駐在員数も今に比べればずいぶん多かったと思います。当時は“オンライン”という手段がなく、何事も人海戦術というわけです。

特に商社の駐在員が多く、大手の場合は企業毎に「婦人会」とよばれる駐在員の配偶者コミュニティーまで存在していました。いわゆる「駐在員の奥様の会」です。

この「婦人会」、定期的に情報交換を目的とした集まりがあるまではよいのですが、ご主人の会社での序列がそのまま奥様の序列になるとのこと。

きっと発足当初は人数も少なく、奥様同士が慣れない海外生活をお互い支え合う目的で交流していたのでしょう。

それが、人数が増えるにつれて「組織」になり「会社の論理」まで持ち込まれてしまったのではと想像します。

ところで、ある大手商社の社員が著名な女性歌手と結婚して当地に駐在したことがありました。(これは聞いた話なので真偽のほどは不明ですが)その歌手は「婦人会」の集まりで「歌を歌え」と迫られ、すっかり嫌気がさし間もなく帰国、そして離婚…。

幸い私の会社は日本人駐在員が総勢2名。しかも、上司は単身赴任でしたので「婦人会」は結成のしようがありませんでした。

駐在員本人は現地で仕事に邁進すればそれでよいのですが、配偶者はそうはゆきません。労働ビザがとれるはずもなく、従って基本的には家事を担いながら日本人社会の中で生活ネットワークを築いてゆかなければならない。

どうしても最初はご主人の会社の伝手を頼ることになりますが、そこで「歌を歌え」と言われてしまっては…。「婦人会」は駆逐されるべき過去の遺物だと思います。