認知症の親を介護していて実感するのが脳と体のアンバランスです。これは看護師の妻に教えてもらったのですが、「医学の進歩で身体は長く維持できるようになったが、脳は(わからないことが多いので)長持ちさせられない」ということ。
この説明には合点がゆきました。たしかに身体を健やかに保ち、不具合があれば修繕する技術はどんどん進歩しています。しかし、脳は…。精神病の難解さにも通ずるものがあります。
認知症は、まさにこのアンバランスが凝縮したもの。足腰はしっかりしているのに、脳が正常に機能しないから、徘徊という周辺症状が発症してしまう。
物を無くしたり、壊したり、買い物でトラブルを起こしたり…それらは、身体が動ける状態に保たれているからこそ、脳の不具合を具現化し、見える化する。
脳と体が同じペースで衰えれば、それは言わば健全な老化になるけれど、体の衰えが緩やかで、脳がそのペースについて行けないと、それは認知症という病気になるのです。