大人のいない国(鷲田清一・内田樹 著)

大人のいない国(鷲田清一・内田樹 著)

私はこの本の二人の著者である鷲田・内田両先生の大ファンです。2009年に出版されて話題になった「日本人辺境論(内田樹/新潮新書)」に共感した私は、それから同氏の本を片っ端から読みあさりました。

鷲田氏は内田氏の著書で言及されていたり、あとがきが鷲田氏によるものだったりで、その存在を知ることに。そして今度は鷲田氏の著作も端から読んでみた次第。

もともとお二人は大学教授でアカデミックな世界を長く歩まれて来た「知の巨人」。独特な哲学的視点で物事をとらえ、それをわかりやすい文章で著してくれます。

まさに「難しいことを易しく 易しいことを深く 深いことを愉快に」語りかけてくれるのです。(参考:「難しいことをやさしく」)

「こんな日本に誰がした」犯人捜しの語法でばかり社会を論じる人々、あらゆるものを費用対効果で考える消費者マインド、クレーマー体質……日本が幼稚化を始めたターニング・ポイントはどこにあったのだろうか。知の巨人ふたりが、大人が消えつつある日本のいまを多層的に分析し、成熟への道しるべを示した瞠目の一冊。

文春文庫(本書うらすじ)

本書はとても薄い文庫本(189ページ)ですが、そこに記された二人の先生の文章や対談は示唆に富むものです。

「あいまい」「迷い」「ためらい」といったものを切り捨てない、直感とか身体感覚を大切にする、いわば理屈万能主義へ抵抗のようなものが一貫して伏流しているように思いました。

まずは自分自身が成熟した大人になるために、そして未来志向でより成熟した社会をつくってゆくために お勧めの一冊です。(文春文庫)