早いものでイギリスが2016年6月23日の国民投票でのEU離脱を選択してからもうすぐ6年になります。
EUが誕生して間もない1995年からドイツとイギリスにのべ9年半駐在した私は、Brexitが現実になったことがにわかに信じられませんでした。
当時欧州で暮らす中で、通貨統合なども目の当たりにした私はEUの一体感や政治、経済のダイナミズムみたいなものに良い意味で驚嘆していましたので。
まさか僅かその20年後に、しかも主要国の一角を占めるイギリスが離脱するとは…。仲睦まじいと思しき夫婦が突如離婚を発表したようなものです。
その半年後、今度はアメリカの大統領選挙でトランプ氏が当選します。ここでも「投票」の結果が衝撃をもたらしました。
どちらも「多数決できめる」民主主義に、果たして正しい選択というものは出来るのか?そもそも民主主義とは何なのか?そこに加担している私たちはどうすればよいのか?
つまり、イギリスのEU離脱とアメリカのトランプ大統領誕生が私にとって「民主主義」をあらためて考える大きなきっかけとなったのです。
そうした折、幸いにも本書に出合い多くの示唆を得ました。前回の「反・幸福論」に続く「佐伯論」の紹介になりますが、こちらも「政治」という抽象的なテーマでありながら文章は平易で大変わかりやすく、例示も豊富です。
そして今、ロシアのウクライナ侵攻というおぞましい現実を目の当たりにし、ふたたび「民主主義」について考えさせられる毎日。
表層的には民主国家を目指してきたロシアが全体主義に大きく傾いている。このことをどのように受け止め、どう行動したらよいのか。私は本書を改めて読み直した次第です。(朝日新書)