同僚から「最近B面が充実しないのですが、どうしたらよいと思いますか?」と相談を受けたときの話を小欄で書きました(「A面とB面」2021-09-13参照)
「B面が充実していないのは、きっとA面が充実していないからですよ。」とアドバイスをしたのですが、実はそのとき一緒にお勧めしたのがこの本です。
私は原節子をスクリーンでしか見たことがありませんが、日本映画界を代表する伝説の大女優であることは彼女の醸し出す雰囲気などから自ずと感じとれる。
きっと華々しい経歴の持ち主であり、美しく彩られた輝かしい人生を歩んだのだろうと勝手に思っていたところに本著と出合い、それは全くの誤解であることを知りました。
当時の映画界はバリバリの男社会であり、そもそも女優という職業は卑しいものというのが世間の見方だった。しかも、原節子の生涯には、あの戦争も影を落としている。
まさに激動の時代を逆境に屈することなく女優として生き抜いたうえに、42歳で引退してからは亡くなるまで一切世間に姿を見せることはなかった。
仕事に対する情熱と引き際の美学。かくも強く、美しい女性の生きざまに心が震えました。(新潮文庫)