医者、弁護士、そして会計士には嘘をつかないほうが良いと、先月の投稿「嘘をついてはいけない相手」で書きました。
今日は、「(そうかと言って)彼らの助言を鵜呑みにしたり、無批判に従ったりする必要も無い」ということを書きたいと思います。
海外で仕事をしていた30代の頃。日本人である自分の感覚では「弁護士や会計士に反論する」ということは想定したことがありませんでした。
弁護士や会計士はエリート。彼らの助言や提言は的確で、疑問を指しはさむ余地はあまりない。私は基本的にそんなスタンスでした。
ところが、ドイツやイギリスで共に働いた現地幹部たちの仕事ぶりを見て、私は自分の過ちを悟りました。
彼らは弁護士だろうと会計士だろうと容赦しません。持論をどんどんぶつけてゆきます。それどころか、「あなたの考えは間違っている」とまで言い切ることすらある。
それに対して弁護士も会計士も、顔色一つ変えず当然のこととして意見を戦わせる。お互いが対等の立場で言葉を交わしているのです。
日本なら上意下達の空気に満ちた中で、士業の方々が無知な子羊たちを導いているような、明らかに主従の序列がその場には浮かび上がっている。
しかしよく考えてみれば、それは「思考停止」している状態にすぎない。全てを士業にゆだねてしまっている実に情けない姿なのです。
弁護士だろうと何だろうと、意見してよい、反論してよい。当事者は自分、クライアントは自分、彼らはあくまでサポーターなのです。自分の考えが「主」であり彼らのアドバイスは「従」。遠慮はいらないのです。
私は30代にこのことを彼らから教わって幸運でした。以後、弁護士や会計士を前に身をかがめるようなことはしないで済みましたから。
それでも、正直まだ少し怖いのは医者です。幸か不幸か、現地幹部が医者と議論する姿は見る機会がありませんでした。 きっと彼らは弁護士や会計士の時と同じ調子でやりあっていることでしょうけれど。