PLAN 75の余白

PLAN 75の余白

「たくさん余白のある映画だと思います。自由に受け止めていただいて、一緒に見た方とお話していただけたらと思います」。早川千絵監督は公開記念舞台挨拶を、こう締めくくりました。

気になる映画で紹介した『PLAN 75』を新宿ピカデリーで観てきました。公開2日目の土曜日ということで「舞台挨拶付き」だったのです。

上映終了後、私たちの前に現れたのは早川監督、主演の倍賞千恵子、磯村勇斗、ステファニー・アリアンの4人。ちょっとした裏話なども聞けて楽しいひとときでした。

さて、私がこの映画を観て思ったのは、まさしく監督の言葉通り「余白が多いなぁ」ということです。もちろん「良い意味」で。

台詞や説明がとても少ない。映像が次々と入れ替わってゆくハリウッド映画とは対照的。小津安二郎や山田洋二といった昭和映画の巨匠を彷彿させるような味わい。

小説でいえば「行間を読ませる」という感じです。字面やストーリー展開を追うだけではなく、その行間に隠されたメッセージを読み取る楽しみがあります。

ゆっくりと静かに移り変わる映像とは対照的に、私の頭はフル回転。それは、この映画の持つ「余白」なり「行間」なりを解釈し咀嚼していたからです。

最近の映画は座席に座ってしまえば、あとは終始「受け身」で済みます。登場人物の心情は台詞で語りつくされ、各場面の状況はナレーションやキャプションで明示される。こちらは、ただボーッとして見ていれば全てインプットしてくれます。

しかし、この映画は違いました。俳優の仕草や表情、映像が映し出す風景、静かに流れる音楽…気が付けばスクリーンの中に自分自身を投げ込んでいたように思います。

ところで、観客の9割以上が女性だったのには驚きました。これほどまでに男性客がいないのはなぜなのでしょうか?

もしかしていわゆる男性更年期で、自分の男性ホルモンが急激に低下し、それが芸術面の志向にも影響を及ぼしているのか…。