巷にあふれる「解説」

巷にあふれる「解説」

『ローマ人の物語』で有名な歴史小説家の塩野七生さん。残念ながらこの大作は、読もう読もうと思いつつまだ読んでいないのですが、『男たちへ』『日本人へ』など短めの著作はいくつか拝読しました。ユーモアを交えながら女性視点で男性にズバズバと物申す内容で小気味が好い。

もう3年以上前になると思いますが、たまたま彼女を取材したドキュメンタリーをテレビで放映しているのを見ました。学生向けの講演やイタリアの自宅での仕事ぶりなどを紹介していたと思います。

詳細は記憶に残っていないのですが、インタビューの中で彼女が「いまの作家やジャーナリストなど言論人は解説ばかりしているから面白くない」という主旨のことを言っていたことは今でもよく覚えています。

つまり「解説はつまらない」と一刀両断した彼女に、その時の私は「なるほど!」と腹落ちしたのです。

たしかに、書店にならぶ本、特に私の好きな新書のコーナーには「解説」が溢れています。新刊コーナーを見ても、さまざまなジャンルの解説本が山積みです

メディアも解説だらけ。元NHKアナウンサーのI氏は「解説」で一躍有名になり、「解説」のための特番まであります。

天気予報では「気象予報士なる専門職がいて、微に入り細に入り解説をしてくれる。朝の天気予報に至っては、どんな服装をすればよいか、傘は持っていくべきかどうか、そんな事まで指示してくれる。(「天気予報」2022-06-11参照

「解説」は、どこか上から目線で鼻につくところがあるように感じます。人の褌で相撲を取るような振る舞いに見えてしまう。

私はプロ野球中継をよく見るのですが、ここにも解説が溢れています。実況アナウンサーの横で、解説者が一つ一つのプレーを解説し、選手や監督の心理まで代弁します。

これは正直言って少し鬱陶しい。但し、NHKで中継するときは、副音声が「球場音のみ」。これは実に素晴らしい配慮だと思います。