図書館でたまたま見つけた本です。
経営の本質とは、一人ひとりでは突破できない難関を、みんなでなんとか切り抜けることにある。そのためには「組織力」を高めることが欠かせない。組織力を宿し、紡ぎ、磨き、繋ぐことで、人々ははじめて組織であり続けることができるのだ―。新入社員から役員まで、組織人なら知っておいて損はない組織論の世界。ビジネスの神髄を理論的に解説。
ちくま新書
読み進めると、早々に「人生は、勢いでしか決められない『重大な意思決定』」と、熟慮に基づいた『つまらない意思決定』とで彩られている」とあり、意表を突かれます。
なるほど、就職、結婚、住宅購入…たしかに自分自身を振り返ってみても、そこには熟慮というより、勢いで決めたところがある。より正確に言えば、熟慮と共に「勢い」が欠かせなかったと思います。
「会社における意思決定も同じ。結局、『勢い』をつけるために、様々な社内プロセスがある」という著者の主張は言い得て妙です。
会社は小さな案件に関してロジックや精密な試算を要求するわりには、大きな案件に対してはかなり大胆な前提を置いて、都合のよい試算結果を作り上げることに寛容です。かく言う自分も、そんなシミュレーションに何度も関わってきました。
大きな案件というのは新規市場開拓だったり新技術の開発だったり、要はわからないことだらけ。ですから不確定要素が多く、社内には経験者もいない。
そうなると、シミュレーションなどバラ色にでも灰色にでもお好きな色に染めることができるのです。
でも、それは詰まるところ「勢い」をつけるためのプロセスだったのだと言われて大いに納得。ロジックでも試算結果でもない、要は「やってみよう」と思えるかどうかなのだと。
結局最後は「勢い」なのであれば、その「勢い」の源泉は?それは「企業風土」だと著者は説きます。なるほど、これも説得力があります…。
こうした人間味あふれる著者の鋭い視点に、私は大いに感銘を受けました。(ちくま新書)