令和の時代になり、世の中で認知症がますます(社会的に)認知されるようになりました。「痴呆」と呼ばれていた頃とは隔世の感があります。それだけ発症する人が増えているということでもあるのでしょう。
認知症の親を持つ身としては誠にありがたいことです。以前なら、周囲に慮って隠れるように介護していたかも。でも今なら胸を張って「親が認知症です」と宣言できますし、世間の眼差しも温かい。
ただ、少し心配なことがあります。それは最近の、「認知症は防げる!」とか「認知症にならないための〇箇条」「認知症にならない人の習慣」といった予防に関する情報の洪水。
こうした言説があふれだすと「認知症は努力次第で防げる」、つまり「認知症になるのは本人の努力が足りないからだ」という空気が出来上ってしまう。
こうなると大変です。せっかく認知された認知症が、一周回って再び冷たい視線を浴びることになる。それも風評被害さながら科学的根拠無しで。
認知症は老化現象ですから防げません。発症のタイミングを遅くしたり、症状の度合いを緩和したりできることはあるでしょうが、努力が足りないから発症するものではない。昨今流行りの「自己責任」では絶対に片付けられない病気です。