持ち上げて落とす

持ち上げて落とす

人は「落差」が好きなんだなぁとつくづく思います。かく言う自分もそうです。「落差」は「意外性」と言い換えてもいいでしょう。

「落差」を生むために「持ち上げて落とす」のはマスコミの常套手段だと聞いたことがあります。話題の人をさんざん持ち上げておきながら、スキャンダルでも露呈しようものなら躊躇なく落とす。

例えばカルロス・ゴーン氏。「経営の神様」と礼賛していたはずが、「容疑者」となるや一転して同氏をこき下ろす。普通なら「彼がそんなことをするはずがない」というのが第一声であってもおかしくないのですが…。

でも、同氏は高く持ち上げられていただけに、落とされたときに大きな「落差」が生まれ、私のようなヤジウマは「人ってわからないものだねぇ」などと茶番劇を楽しんでしまうわけです。

テレビドラマでも小説でもミステリーが大流行り。「大どんでん返し」がかならず準備されていて、視聴者や読者も実はそれを心待ちにしています。これも「落差」です。

最も善良な市民に見える登場人物を真犯人にすることで「落差」は極大化し、私はその「意外性」に歓喜する。

最近の例ではプロ野球日ハムのBIG BOSS。監督就任が決まってからマスコミの常套手段が発動しているように思います。

今シーズンの公式戦開幕までの間に、同氏はずいぶん高いところまで持ち上げられました。マスコミはそろそろ落とすタイミングを見計らっているのでは。

ご本人も調子に乗って昇ってしまったところはあるでしょう。でも、一方で、同氏は批判や苦言を覚悟の上で日本プロ野球界への問題提起をしている面もある。

専門家の見立てでは今シーズンの日ハムは最下位の予想。これから敗戦が積み重なってくるとBIG BOSSは糾弾され、責任論が噴出してくるかもしれません。

そうなったとき、監督を擁護する人が僅かでもいて欲しいと思います。カルロス・ゴーン氏のケースとは違い、野球の勝敗はあくまでスポーツ・ゲームの範疇ですから。