会社人生のたぶん3分の2くらいは、いつも成長戦略を考えていたように思います。
中期計画を3~5年のスパンで立てつつ、年度計画を毎年つくる。この繰り返しで、どこの企業も似たようなやり方をされていると思います。
作成にあたって必ず出てくるキーワードが「成長」でした。それも毎年です。つまり前年実績を越えるというミッションが現場に与えられるのです。
前年割れの計画は計画にあらず、完全NGで箸にも棒にもかかりません。
そして、それを実現するための戦略を「成長戦略」と呼び金科玉条のごとく奉られます。
さて、現場は総力をあげて計画数字を積み上げます。その結果、例えば前年比+8%になったとしましょう。本社の目標が+8%以下ならよいのですが、もし10%だったら「2%のギャップを埋めなさい」と差し戻されます。
そこで現場は「それなら、こんな新製品を出してください」と返します。すると「すぐには難しい」といわれます。
「ならば、こういう戦略で施策をうつので追加投資をさせてください」というと「利益は死守しなさい」といわれる。本社と現場の押し問答が続きます。
それでも、議論を尽くしてなんとか落としどころに着地しますが、現場目線で言えば、なかなか厳しい目標設定となります。(参考:目標設定は“SMART”に)
さて、過去に一度だけ本社と現場のギャップがどうしても埋まらないことがありました。
実はいつもギャップが完全に埋まることなどないと言えばないのですが、この時ばかりは乖離が大きすぎました。さすがに全く何の根拠もない数字は現場としても飲めません。
議論は平行線のまま時間切れ。最終的に「ストレッチ○■☆▼◇予算?」とかなんとかいう(正確な名称は忘れました)奇妙な名前の予算が賦課されることに。実態は「捕らぬ狸の皮算用」予算ですね。
企業はいつまで成長を続けなければならないのか。成長度合いが多少落ちても、利益が確保できればそれでよいではないか。そんな疑問をもちながらも「計画」だけはいつも右肩上がりでした。
しかし、最近はSDGsへの取り組みを評価対象にするなど、ステークホルダーの企業を見る目も変わってきています。これはきっと量的成長から質的成長へシフトする兆しです。歓迎すべきことだと思います。
量から質へ!人も法人も、ある程度歳を重ねたならば、大切なのは外見よりも中身でしょう。質的成長への流れがこれからも続くことを期待します。