タクラマカン砂漠をゆく(7)

タクラマカン砂漠をゆく(7)

今回の出張はカルチャーショックの連続。体力的にも結構しんどい行程で、もし、もう一度行けと言われたらおそらく今の私では無理でしょう。

実はこの壮絶な出張の2か月後に、私は食品メーカーから化粧品メーカーに転職しました。つまり、この出張が決まったとき既に私は退職届を出して受理されていたのです。

それにも関わらず当時の上司は私にこの貴重な機会を与えてくれたのでした。もちろん、行先が行先であり、しかもお盆休み返上ということで他に適任者が居なかったという事情もあったでしょう。

しかし、「誰も行かない」とか「時期をずらす」といった選択肢もあった中で、当時の上司はもうすぐ辞める部下を中国の奥地に派遣してくれたのです。この計らいには今でも心から感謝しています。

さて、あれからおよそ20年が経過したある日、私は化粧品メーカーの社員として出張でデュッセルドルフに来ていました。

夕食会の待ち合わせで日航ホテルのロビーに居たのですが、何と驚いたことにM商事のK氏が同僚や上司らしき数名のスーツ姿の男性たちと立ち話をしているではありませんか。

残念ながらK氏は“話の輪”の中に完全に組み込まれており、私が送った視線に全く気付かず。一方の私も、ちょうど待ち合わせの相手が来てしまい離脱できず。

K氏とは化粧品メーカーに移ってからは音信不通でしたが、一目見てすぐに彼だとわかりました。ドイツで、20年後のK氏の姿を目にするとはなんという巡り合わせ。

あのシルクロードで何かが私たちに取り憑いたのでしょうか?ちょっと神がかり的なものを感じます。またいつかどこかで、突然再会するのでは・・・そんな気がしています。(おわり)