タクラマカン砂漠をゆく(5)

タクラマカン砂漠をゆく(5)

いよいよタクラマカン砂漠爆走の日の朝。ホテルロビーにて、満面の笑顔で私たちを出迎えてくれたのは中国人の蔡(サイ)さん。中国M商事に入社したばかりで日本語が堪能な好青年。案内役として同行してくれるとのことです。

テレビ朝日のクルーは既に出発した模様、パジェロの姿はありませんでした。さあ、いよいよ私たちも出発です。「では、こちらの車で行きますので、乗って下さい」と蔡さん。

K氏と私は心の中で叫んでいました「えぇ…本当にこの車で行くんですか?」と。パジェロでもない、ランクルでもない、年季が入ったハイエースであります。

へたったシートに腰をおろしますと、すぐにペットボトルの水が手渡されました。エアコンなし、内装なし。幸いシートベルトは機能しているようです。

ドライバーの運転は豪快。一方で、車のサスペンションは無いようなもの。道路はもちろん未舗装。路面の凸凹からくる振動が全身に響きます。

それでも1時間もすると、この過酷なドライブに身体が慣れてきました。車窓の景色に変化は殆どなく、見渡す限りの荒野。たまに道路に沿って集落らしきものが現れるくらい。

意外だったのは交通量の多さ。土砂を積んだトラックや人をたくさん乗せたバスが結構走っています。集落近辺では牛車がずいぶん活躍していました。

途中のトイレ休憩では度肝を抜かれました。「これが公衆便所ですけど、別にどこでも適当な場所で用を足してもらって大丈夫です」と蔡さん。

その“公衆便所”をのぞいてみると、ただの「がら~んとした空間」でした。扉も、仕切りも何もなく、地面に穴が数か所、2メートルほどの間隔をあけて掘ってあるだけ。

つまり、ここでは自分の好きな穴をまたいで座り、男女大小の区別なくオープンスペースで用を足すということのようです。

これでは、動物の排泄行為と同じですね。「恥ずかしい」とか「はばかる」文化をもつ私たちは名実ともにカルチャーショックを受けました。(明日につづく)