雑用の優先順位

雑用の優先順位

かつて会社の大先輩から「雑用は優先順位なんか考えないで、端から片付けたほうがいいよ」と言われたことがあります。

それは初めての海外勤務でドイツに赴任した時のことでした。その人は、当地で長きにわたり駐在員として勤務し、本社への異動が決まったところ。私との業務引継ぎの最中での話です。

どうやら日本人駐在員というのは、本社と現地の仲介役で、頻繁に両者の板挟みになるらしい。それに、(当時は)本社スタッフの外国語能力もそれほど高くないため、重要案件から雑用まで、なんでもかんでも駐在員経由。このため、役職は立派でも、日々の業務をみれば雑用もかなり多いと。

たしかにその通りでした。言うまでもなく現地子会社の経営が本来の仕事なのですが、出張者のお世話や役員の運転手、チケットやホテルの予約といった旅行代理店まがいの業務などもヤマのようにありました。

もっとも、20年も前の話ですから、今はもう少し改善されているとは思いますが…。

さて、私は、雑用でも何でも、どちらかと言えば優先順位をつけてから着手するスタイルが好きでした。しかし、ドイツに赴任してからは、大先輩のアドバイスに従っています。

そもそも雑用ですから、優先順位というものをつけにくいのです。何から手を付けようかなぁなどと思案している時間があれば、1つ2つ案件を片つけてしまったほうがよい。

そういえば、どこかの中小企業の社長さんが、新入社員の採用を「早い者勝ち」で実施しているという話を聞いたことがあります。

早く応募してくるということは、意欲がある証拠であり、現にその方法でよい人材が確保できているとのお話でした。

なるほど、これも「優先順位をつけない」という考え方に通ずるものがありそうです。あまり時間をかけて考えても仕方ない。とにかく雑用なら「端からやってみる」、人材なら「応募が来た順に採用してみる」ということでしょう。

熟考し計画をたててから、物事を進めてゆくことはもちろん大切です。一方で、こうした「割り切り」と申しますか、あまりくよくよ考えずに、まずは動いてみるという「思い切り」も時には必要だと思います。