かれこれ7~8年前のこと。仕事のストレスとダイエットのダブル効果で、私のおなか周りがすっかりスッキリ。スーツのズボンがブカブカになってしまいました。
ベルトで締め上げてもよいのですが、どうも見た目がさまにならない。そこで丈を詰めてもらおうと寸法直しの店を探しに出かけました。
あてにしていたすぐ近くのお店を訪ねてみたら、なんと知らぬ間に閉店。はて、どこか他にあったかなぁ…。
そういえば!駅前で「寸法直し 修理センター」という古めかしい看板を見たのを思い出しました。荻窪銀座商店街にある老舗の寸法直し屋さん。
お店の名前は「荻窪テーラー」。少なくとも私の年齢よりは長く営業しているだろうその店構えは、創業当時の面影をそのまま残しています(たぶん)。
中には小さなカウンター。その上には何やらメモ用紙のようなものや伝票、クリップなどが雑然と置かれ、奥にはスーツやYシャツなどが、所狭しと吊るしてあります。昔ながらの自宅兼店舗・作業場なのでしょうか。
奥から愛想の良いおかみさんが出て来ました。「景気が良いと人々の着る服は生地をたっぷり使ってゆったりしたものになるんです。でも不景気になると生地を節約するから身体にピッタリしたものが増えますね~」
なるほど、さすがこの道云十年の職人さんという感じで、おかみさんとの対話がとても楽しかったのを覚えています。お願いしたズボン丈の直しも完璧な仕上がりでした。
先日、ふと思い出して久しぶりに荻窪銀座へ足を運びましたところ、今も「荻窪テーラー」は健在のようで安心した次第。
時代の移り変わりとともにいわゆる「チェーン店」が増える一方ですが、こうした老舗の存在は、私たちに心地よい懐かしさと安らぎを与えてくれます。