光の媒体

光の媒体

『銀河鉄道の夜(宮沢賢治)』を読んでいたら、「先生」が天の川について説明するこんな一節があった。

「ですからもしもこの天の川がほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。(中略)。そんなら何がその川の水にあたるかと云いますと、それは真空という光をある速さで伝えるもので、太陽や地球もやっぱりそのなかに浮かんでいるのです。」

真空という…の部分が気になる。真空とは「何もない状態」、つまり「無」のはずだが…。

高校の物理で光は「粒子」と「波」の性質を持つと教わった。日常生活においては紫外線や放射線など「波」としての顔が馴染み深い。

「波」なら媒体がある。音は空気、(海などの)波は水という媒体が振動する現象。では、光は何の振動なのか?何も無いはずの宇宙空間を伝わるのはなぜか?

宇宙はエーテルという仮想の物質で充ちていて、それが媒体だという説があるが、未だ真偽は定まっていないらしい。

一方で「先生」の説明には妙に納得感を覚える。真空=媒体、つまり光は「無」の振動であり、いわば「無」が可視化されたものというわけだ。ビックバンを彷彿させる。