ロスバノス(Los Banos)にて(3)

ロスバノス(Los Banos)にて(3)

週末は工場もお休み。でも、どこかに出かけたくても車がない。近所を散歩するといってもモーテルの前には小さなキオスクとピザ屋があるだけでした。

それでも現地スタッフがドライブに誘ってくれたり、自宅に招いてくれたりしたおかげで休日も楽しく過ごすことができました。

最初の週末観光はカーメル。ロスバノスから車で1時間半ほど西に行ったところ。芸術家や詩人が集まる町とも言われ、俳優のクリント・イーストウッドが市長を務めたことでも知られています。

そこで生まれて初めてクラムチャウダーというものを食べたのですが、とびきり美味しかったのを今でもよく覚えています。実は今となってはそのことしか記憶にありません。車であちこち案内してくれた駐在員には申し訳ないのですが…。

ヨセミテ国立公園にも行きました。現地の女性スタッフの彼氏が車を出してくれるとのこと。お邪魔かなぁとは思いつつも、「遠慮はいらないから一緒に行きましょう」というお言葉に甘えて、便乗させてもらいました。

この公園には「大自然」という言葉がピッタリ。大きな岩山の数々、その上から流れ落ちる滝、どれも壮大なスケール。まるで自分の身体がこの大自然に飲み込まれてしまいそうな感覚でした。

自宅に招いてくれた現地スタッフもいます。昼食をごちそうになり、ご主人のDIYを手伝ったり3人の子供たちと遊んだりして土曜日の午後を過ごしました。

彼女に「日本に行ってみたいと思いますか?」と聞いたところ「その前にニューヨークに行ってみたい」と。

なるほど、「国内」とは言えサンフランシスコまで車で2時間、そこからニューヨークまで飛行機で5時間半ですから、そうそう気軽に行ける場所ではないのですね。これまたスケールの違いを感じる瞬間でした。

こうして、あっという間に時は流れ、皆の努力の甲斐あって工場は4月末に予定通り稼働に漕ぎつけました。

あれから32年。会社のホームページを調べてみたところ、今はもう飲料は作っていないようですが業務用トマトソースなどの製造は続いているようです。

ロスバノスは私にとって思い出深い、記念すべき海外現場の第1号となりました。