初めての海外出張は大学を卒業後、食品会社に入社して2年目のとき。ちょうど会社がカリフォルニアの米国工場の立ち上げを進めているところで、現地に赴きプロジェクトに参画させてもらえたのです。
当時の私は栃木にある研究所の飲料開発グループに配属された、まだまだヨチヨチ歩きの社会人でしたので、このような機会を得たのは運がよかったとしか言いようがありません。
建設をすすめているその工場はロスバノスという小さな町にありました。本格稼働の暁には日本市場向けの缶飲料(果汁飲料や清涼飲料)を製造し輸出する計画です。
そのため、日本市場で販売可能な商品を製造できるよう、米国のみならず日本国内の規制や基準もクリアできる体制を整えてゆかなければなりませんでした。
国内規制のメインは日本農林規格(JAS)。加工食品にはよく「JASマーク」が印字されていますのでご存知の方も多いと思います。
例えば果汁飲料なら、その果汁の品位や糖度、酸度などのJAS規格が決まっています。従って、米国工場で製造時にそれらの値をJASが認めた測定方法で計測する必要があります。
つまり、そうした日本の規制に準拠した品質管理のオペレーションを現地スタッフに伝授して技術を習得してもらわなければならないのです。
ということで、会社は英語でコミュニケーションができ、飲料の成分測定・分析のできる人間を探していたところ、たまたま私に白羽の矢が立ったのでした。
私は米国人に指導できるほど知識や経験があるわけでもないのですが…。それでも、会社のご指名ですからとにかく頑張るしかありません。
上司も「Aさんによ~く教わっておけよ!」と。Aさんとは同じグループで働く分析のエキスパートのことです。
規格の中に「アミノ態窒素」というものがあります。実はこの測定がとても難しい。Aさんの職人ワザにかかると安定的に数値が計測されるのですが、たまに私がやってもちっとも上手くいかない。早速Aさんに弟子入りすることにしました。(明日につづく)