若かりし頃、ご近所のおばあさんに三味線を習っていたことがあります。その後、しばらくしてから、もう少し本格的に習いたいと、ある津軽三味線教室の門を叩きました。
三味線を習おうという若者は当時希少だったのか、トライアルレッスンにも関わらず、おじさん師匠の「逃がさないぞ!」という暗黙のプレッシャーが凄かった。
そんな師匠の圧に押し切られるかたちで、私は一抹の不安を抱えたまま入会を申し込み、次の週から受講を開始すると約束して教室を後にしました。
しかし、自宅に戻って再考。これは一度始めたら最後、容易には抜けられない。仕事との両立にも不安が残る。やっぱり申し込みを取り消そう、と決めました。
取り消すといっても、またあの師匠に会って話をするのは気が重い。あの圧を押し返すことができるか?かといって電話で話すのも煩わしいし…。そうだ、手紙で済まそう!
ただ、教室の住所がわかりません。書類を見ても電話番号が書かれているだけ。インターネットもない時代のことですから、電話で聞くしかありません。
そこで、第三者を装って電話をし、対応した事務員に不審に思われながらも、なんとか住所を聞き出し、キャンセルの手紙を書いて投函しました。
華道、茶道、舞踊、特に和のお稽古事は何かと煩わしいことが…。気軽に出来るカルチャーセンターが盛況な理由がよくわかります。