鍵(谷崎潤一郎 著)

鍵(谷崎潤一郎 著)

老いと共に失われてゆく「性」をテーマにした作品。しかも、あの耽美派で知られる谷崎潤一郎という作家がどんな世界を描いているのか知りたくなった。

文庫本のタイトルは『鍵・瘋癲老人日記』ということで2つの作品が収められている。加山又造(日本画家)デザインの真っ赤な表紙が目を引く。

実は『瘋癲老人日記』が先日の新聞に取り上げられていたので、そちらを捜しあてたら『鍵』が付いていたというわけ。そこで、『日記』はやめて『鍵』を開けることにした。

本の背表紙には「日記の秘密を妻に盗み読みさせる。性の衰えに焦る初老の夫の思惑は、年下妻の淫蕩を目覚めさせるか…『鍵』」とあるが…。

率直に言って難しかった。いわゆる官能小説とは全く違うが、剥き出しの「性」を描く著者の意図が掴みきれない…。でも、山本健吉氏の解説を読んでスッキリした。

そこは「老境において達した人間認識の一端」で「人間の性愛と死とが、不可分の主題としてないまじっている」世界だったのだ。(新潮文庫)