「ことば」そのものに興味がある私にとって、本書は知的好奇心を大いに刺激してくれた。
言語とは実に不思議なもの。本書の副題は「ことばはどう生まれ、進化したか」だが、まさにそれを知りたい。
特に「どう生まれ」の部分は謎だらけである。著者はその謎を解くための入り口としてオノマトペを題材に研究、考察を繰り返し深く堀進んでゆく。
「オノマトペとは何か」を確認し、その「アイコン性」や音象徴といった分析を経て、「オノマトペは言語か?」という疑問に対する一つの回答を導く。
そこから更に、外国語との比較や子どもの言語習得の探求を踏まえ、言語の本質に迫る。
終章一つ手前の第7章「ヒトと動物を分かつもの」で述べられた「対称性推論」はとても興味深い内容で大興奮だった。
言語は貨幣に似ていると思う。どちらも日々の暮らしに深く関わる不可欠な「媒体」であり、身近な存在だが、その起源はベールに包まれたままだ。
もしそのベールがとれるとしたら、それは人間の起源が明らかになるときなのかもしれない。(中公新書)