安さと付加価値

安さと付加価値

今月4日の新聞記事に、ある業務スーパーの取り組みが紹介されていました。「安さと付加価値 両立」という見出しのついた本文の中で、少し気になった箇所があります。

国内25か所のグループ工場による自前の生産体制で流通コストを減らし、扱う商品も絞り込んで安さを実現する。店の判断で野菜や肉、鮮魚を置くこともあるが、本部では原則、生鮮食品の仕入れはしない。売れ残りによる食品ロスが利益を圧縮するのを避ける狙いがある。店に並ぶのは冷凍やレトルトの食品、缶詰、乾物といった日持ちがする商品が中心だ。

読売新聞(2022.5.4)「経済転換」より

経済効率を最優先し利益を追求するのが企業ですから、このスーパーの取り組みは至極真っ当です。肝心のお客様からも好評を得ているそうです。

しかし、どこか本末転倒のような気がしました。企業の利益を追求するために、収益性の低い生鮮が排除されるわけですから。でも冷凍や缶詰より生鮮のほうが美味しいのは確か。

つまり、顧客は「おいしさ」を諦めることで企業の利益アップに協力している。やがてその企業は、経済効率は悪いが美味しい食材を提供してきた町の肉屋、魚屋、八百屋を駆逐する。

同じ記事からもう一箇所引きます。

ヒット商品となった豆腐用の容器に入った冷凍チーズケーキ。買収した工場自体は今も豆腐を作っているが、単価が低いため利益は出にくい。容器を活用してケーキも作れば200~300円と豆腐の4、5倍の値段で売れる。

私もチーズケーキは大好きですが、日本の伝統的な食であり健康にもよい豆腐が、こうして端に追いやられてゆくのは何とも忍びない気持ちになります。

これは「資本主義」の宿命なのでしょうが、やはりどこか寂しい。経済計算上、企業の「利益」=「付加価値」ではありますが…。

「食」が経済効率の名のもとに「進化」してゆく。食卓に並ぶのは加工品ばかり、やがては錠剤(サプリメント)だけになる?そんな日常はあまり想像したくないですね。