お正月になるといつも思い出すのが「西暦2000年問題」のことです。ご記憶の方もいれば、まだ生まれていなかったという人もいらっしゃるでしょう。
何が問題かと申しますと、当時のコンピューターは「日付を西暦下2桁表示、つまり上2桁は省略しているので2000年になる瞬間00となるため誤作動する」という話です。マスコミでも大騒ぎしていました。
この件で前年末に東京本社から私の勤めるドイツ支社にも通達が来ました。「各国の日本人駐在員は現地時間1月1日に出勤して現地での混乱やPC異常などがないかを確認し、直ちに本社に報告せよ」と。
これにはビックリ。私たちが防衛省の職員でミサイル誤発射に備えるというスケールの話ならともかく、一(いち)消費財メーカーの社内システムに誤作動がないかどうか、世界中の支社で元旦に確認?!
しかも、コンピューター技術者でもない駐在員が誰もいないオフィスに朝一人で出勤してパソコンのスイッチを入れてみてどうするのでしょう。もし、異常があっても手も足も出ません。
この話を知り合いの大手電機メーカー駐在員にしたところ「うちの会社は特に何もしませんよ。」と一言。電機メーカーは何もしないのに消費財メーカーであるウチがなぜこんなに過剰反応しているのでしょうか?
もっと気の毒なのは本社の情シス部門の担当スタッフです。わざわざ元日に出勤して、各国からの報告が来るのを待つとのこと。世界中に支社がありますから、時差も考えれば終日東京のオフィスで過ごすことになります。
さて、現地時間で元日の朝9時、私は誰もいないオフィスに出勤しPCのスイッチを入れました。異常なし。
早速東京に電話しました。向こうは夕方5時。電話に出たのは気心知れたかつての仲間。「まだあと数か国、報告待ちですよ…これまでどこも異常なし。大山鳴動して鼠一匹です。」
ちなみにこの問題、日本でも世界でも事前に騒がれていたようなほどの混乱はまったく起きませんでした。
そもそも そんなリスクはなかったのか、あるいは技術者達がそのリスクを察知して未然に防いでいたのか。いまだにはっきりわからないまま20年以上の時が流れました。