地上の地下鉄

地上の地下鉄

幼い頃よく父と地下鉄丸の内線に乗った。週末に場外馬券売場に行く父についていくのだ。行先は後楽園駅か新宿三丁目駅。

こちらの目当てはもちろん馬券ではなく地下鉄に乗ること。特に丸の内線は地上区間がある。地上を走る地下鉄に乗っている自分。これは子供心にもかなりエキサイティングだった。

当時どこに住んでいて、どんなルートで行ったのかは全く記憶にないが、まだ冷房がなく、窓全開の騒々しい車内の光景はおぼろげながら覚えている。

先週、湯島天神を参拝した帰り道。お茶の水駅近くの聖橋まで来ると、橋上でカメラやスマホをかまえる人々が多くいた。

なるほど、神田川にかかるこの橋から、この川を渡るために地上に出てくる丸の内線を見下ろせるのだ。まもなく電車が通るのだろう。

「JRとも隣接しているし、きっと、鉄道オタクには面白いんだよ」という女性の声が、後ろを通り過ぎた。せっかくだからと、私も電車が現れるのを待つ。

間もなく、真っ赤な車両がトンネルから顔を出し、ゆっくりと長く伸びてゆく。その姿は地中から這い出した「みみず」のように見えた。

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かくと

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「荻窪ラジオ」の神木各人(かみき かくと)です。私は国内外で33年間のビジネスマンライフを終え、今は荻窪を拠点にフリーランスとして活動中です。「荻窪ラジオ」では、私のこれまでの経験や、日々の暮らしで考えたことなどを「オンエア」。「読む」ラジオとしてお付き合いいただければ幸いです。

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