防衛大学校(11)

防衛大学校(11)

何もかもルールずくめの防大生活。中でも手を焼いたのが敬礼です。

着帽時には「挙手の敬礼」といって、右手を右目の上あたりに斜めにかざします。一般的によく知られている敬礼のスタイルですね。

一方、室内などで帽子をかぶっていない場合は、手は挙げず、腰から上体を10度倒す。鋭くおじぎをするような動作になります。

いずれも、動作そのものは簡単で、手の角度や位置などはすぐに体得できますが、問題は敬礼を終えるタイミング。挙手の敬礼で言えば、いつ手を降ろすのかがやっかいなのです。

敬礼は「下位者が上位者に先駆けてはじめ、上位者より先に終えてはいけない」という当たり前ともいえる大原則があります。

つまり、下位者は上位者より先に手を挙げ、上位者より先に手を下げてはいけない(上位者が手を降ろしてから自分の手を降ろす)のです。

これはお互いが移動中、例えば、自分が通路を歩いていて、向こうから上位者が三々五々こちらに歩いてきてすれ違うような場面では地獄です。

最初にすれ違う上官に敬礼したら、その上官が答礼の手を降ろすまでは自分の手を下げられません。すぐ後ろには2番目の上官が続いている。

その際、自分の手を挙げたままにしたいところですが、これは「流し敬礼」と言って禁止されています。ですから、最初の上官の手が下がるやいなや、素早く自分の手をさげ、2番目の上官とすれ違う前に再び手を挙げて2度目の敬礼をする。

遅い時間に食堂に行く羽目になった時などは、食事を終えて帰ってくる何十人という上級生とすれ違いますので、食堂に着くまでに右手を上げたり下げたり。上腕の“筋トレ状態”でした。(つづく)