記憶のふしぎ

記憶のふしぎ

両親もそうだったが、認知症になっても昔の記憶は残っている。5分前に話した内容は何も覚えていないのに、何十年も前(特に本人が子供の頃)のことを忘れずにいる。

従って、父や母と話すときは、「二人から聞かされた子供の頃の思い出話」を思い出して話題にするようにした。

もちろん昔のことなら何でも覚えていたわけではないが、運よく記憶に残っている話題にあたれば話がはずみ、本人たちも笑顔になる。

考えてみれば幼いころの記憶力というのは凄まじい。自分自身を振り返ってみても、小学生のときに暗記した東京から松本までの中央線の駅名は今でもスラスラ暗唱できる。

大学時代の友人に歴代天皇の名前を全て暗唱できる男がいたが、彼も幼少時代に暗記したと言っていた。円周率の数字を延々と言い続けることができる者もいた。

幼少時代の記憶というのは、(全部が全部ではないものの)まるで何か特別な場所に保存され、しっかり保護されているかのようだ。