最近「倍速視聴」という言葉をよく耳にします。映画などを通常の1.5~2倍の再生速度で見たり、台詞のないシーンをスキップしたりして鑑賞することを指します。
これはもはや「鑑賞」ではなく、あらすじを確認するだけの「消費」だと言う専門家もいるようです。
私のようなX世代から見ますと、作り手の意図を軽視した、ちょっと奇妙なやり方にも見えます。まるで赤ワインをビールのようにゴクゴクとのど越しで飲むみたいな…。
若い世代が好んでとる行動らしいと聞き、わが家のZ世代に意見を求めたところ「“倍速”に何の違和感もないよ」と即答されました。まず、倍速で見て、面白そうなら改めて等速で見るそうです。
あらすじがわかってしまっても構わないのか?と問うと、ストーリーがわかっていたほうが安心して見られると。
なるほど!「安心して見たい」という感覚、私にもわかるような気がしました。例えばX世代が喜んで見ていた「ウルトラマン」。
当時、倍速視聴は不可能ですが、そんなことをしなくても、「ウルトラマンが絶対に勝つ」ことは誰もが知っていました。
「水戸黄門」はどうでしょう。こちらも、ストーリーはワンパターン。最後は「この紋所が目に入らぬか!」の信賞必罰でハッピーエンドになることを皆わかって見ている。
あの頃から既に私たちは、ストーリーをわかっていて見る、安心して見る、という楽しみ方をしていたとも言えそうです。