会社における コストダウンの功罪

会社における コストダウンの功罪

いわゆる裏紙(印刷ミスした紙の裏面)を再利用する、照明をこまめに消灯したり、冷暖房の温度設定を変えたりして電気代を節約する。タクシーを使わずバスにのる…よくあるコストダウンの手法です。

私も雇われの身として、こうした活動に何度も参加してきました。「コストは下げたほうがよい」にきまっていますし、最近ではSDGsの観点からも、こうしたコスト削減は資源の節約につながりますので、ますます重要視されます。

でも、実際の効果は、微々たるものどころか、むしろトータルではコストアップになる場合すらあります。

裏紙を使うために、その保管場所を別に作り、そこが乱雑にならないように管理する。ある程度たまったら、角をキレイに揃えてコピー機の用紙トレーに装填する。こうした一連の作業が新たに発生しますので、その分の人件費がかさみます。果たしてコスト削減になっているのやら。

省エネという観点でも疑問です。裏紙に印刷された文字は、読みやすいとは言えません。裏の印刷が透けてしまうこともありますので、結局プリントし直したり、どうせ裏紙だからと、余計なものまで印刷してインクの消費量をふやしたり。

それでも、経営者は「コスト意識」が大切だと、精神論をもって、こうした取組みへの参画を従業員に要請してきます。しかし、これで本当に「コスト意識」が根付くのでしょうか。

確かに、意識の向上はある程度望めるでしょう。浮いたコストを従業員に還元して、モチベーションアップをはかっている会社もたくさんあると思います。

コスト削減は必要だし、従業員はコスト意識しっかり持つべきであることに異論はありません。ただ、真に目指すべきは、黙っていても皆が自発的にコスト削減するような組織にすることだと思うのです。

なので、どうせやるなら、もう一歩先を目指したいところです。

「ムダ使いをするな」とか「節約したらご褒美をあげる」といったやり方は、どこか従業員を「子供扱い」していると感じます。だから、心に響かず、浸透せず、なんとなく皆の気持ちが乗らないのです。

では、どうすれば良いか。それは、「子供扱い」をやめればよい。PLやBSといった大きな話から入る。

そして、可能な限り具体的な数字を共有しながら、なぜコスト削減が必要なのか、その目的と目標値まで伝えたいところです。目的を語らず、手段を前面に押しだされても、実行部隊としては面白くない。

逆に目的さえ共有できれば、手段は「お任せ」でよいでしょう。裏紙を使うというのは手段の一つにすぎませんし、そもそも、目的を達する最も効果的な方法は、現場が一番よく知っているはずですから。