それでも人生にYesと言うために(柳田邦男 著)

それでも人生にYesと言うために(柳田邦男 著)

食品会社の生産部門に勤務していた頃、同じ部署で親しかった先輩に勧められて読んだのが柳田邦男氏の『マッハの恐怖』(新潮文庫1986年)だった。

「巨大技術文明の中での連続ジェット機事故の原因を追究した、柳田ノンフィクションの原点」と評される作品で、企業と安全に関する著者の深い洞察に感銘。以来、私はノンフィクションの世界に魅せられつづけることに。 

本著は「2005年 JR福知山線脱線事故(死者107人 重軽傷者563人)」の真因と被害者の20年を描いた作品。柳田氏の詳細な事実検証と分析力が光る2025年4月発行の最新作だ。

「1両目が脱線し始めてから、最後尾の7両目が停止するまでの時間は、約10秒に過ぎなかったことになる」…この僅か10秒がもたらした修羅を必死に生き抜く被害者や遺族の雄姿に胸が打たれた。(文藝春秋)