文学界の巨匠小林秀雄と、同氏より30歳年下で最も多く対談相手となった同じ文芸評論家の江藤淳による対談集。
「美について(1961年)」から三島事件について語った「歴史について」や、晩年の大作「本居宣長」をめぐる対談まで17年間に行われた5回の対話と関連作品が紹介されている。
小欄で同氏の『考えるヒント』を紹介した際に、
「小林秀雄と聞くとなんとなく硬くて難しい文章が書かれているように思っていたのですが、実際に読んでみると、文章は論理的でわかりやすくスラスラすすめます」
と述べたが、これが対談となれば文章は口語体であり、しかも江藤氏が小林氏のコメントを受けてわかりやすく換言してくれるようなところもあって、これまたスラスラ読めた。
知の巨匠によるこの対話は、今から半世紀以上も前に行われたとは思えないほど新鮮で、深い洞察に満ちている。
巻末に収録されている江藤氏による2つのエッセイ『言葉と小林秀雄』『絶対少数派』では小林秀雄の偉大さを改めて思い知らされた。(中公文庫)