ハンチバック(市川沙央 著)

ハンチバック(市川沙央 著)

ご存知の通り第169回芥川賞受賞作品。妻が「職場で勧められ、スタッフで回し読みしている」とのことで、私も便乗させてもらって読んだ。

ハードカバーながら96頁という薄い本の帯には、村田沙耶香さんの「打たれ、刻まれ、いつまでも自分の中から消えない言葉たちでした(以下略)」ほか2人の女流作家のコメント。

期待をふくらませつつ本を開くと、オープニングはいきなり官能小説のくだり。オブラートに包むことなく生々しく直接的な言葉が次々と繰り出される。

なるほど、「衝撃的な作品」と評されるわけだ。“剥き出し”の表現を盛った短い文章が物語を進める。否、「文章」というより、村田さんの言う通り「言葉」を受け取っている感じ。

「文章」がある程度の長さを持つ「矢」だとすれば、この作品は読者に「言葉」という短い「弾丸」を打ち込んでくるかのようだ。

しかし、その「弾丸」たちは、私の心を「圧迫」したものの、「矢」のように「刺さる」ことはなく、何とも表し難い複雑な読後感だけが残った。(文藝春秋)