人新世の「資本論」(斎藤幸平 著)

人新世の「資本論」(斎藤幸平 著)

人類の経済活動にブレーキをかけなければ地球がもたない。私たちは気候変動がもたらす環境危機の時代を生きている。

その危機を乗り越えるためには、資本主義を終わらせ、「脱成長」をもって新しく豊かな未来社会へと大転換しなければならない。

本著は、そのためのヒントを、晩期マルクスの思想に見出した著者の論考である。とても興味深く読んだ。

私が最初に「脱成長」の思想に触れたのは水野和夫(経済学者)氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』。

その後は、佐伯啓思氏の著作を片っ端から読んでいるが、その度に「脱成長」の重要性を思い知らされる。

しかし、「脱成長」と叫ぶと、「高度成長やバブルでいい思いをした輩の戯言」などと捉えられがちだ(ちなみに、水野氏、佐伯氏ともに昭和20年代生まれ)。私は、この思想が絶えてしまうのではないかと心配だった。

今回、本著を読み、その心配は無用であると確信した。斎藤氏は1987年生まれの大学准教授。「脱成長」の思想を引き継ぐ次世代の論客なのである。今後も同氏の発信に注目して行こうと思う。(集英社新書)