上司は思いつきでものを言う(橋本治 著)

上司は思いつきでものを言う(橋本治 著)

社会人5年目の頃、同じ部署の先輩から「この本よんでみな」と勧められたのが橋本治さんの著書「上司は思いつきでものを言う」です。

私の周囲には「思いつきでものを言う」上司だなぁと思わざるを得ない人がけっこういましたので、本のページをめくるたびに、苦笑いしつつ大いに共感した次第。

当時、わが部署を統括していたA部長も、その「思いつき」が得意技。きっと暇なのでしょう、何やかんやと思いついてはB次長に指示を出していました。

一方のB次長も心得たもので、「はい、はい」と生返事で適当に受け流していますが、それでも10回に1回くらいはA部長の圧に対抗できない案件が発生し、火の粉が…。

そんな案件の一つに「円高プロジェクト」というのがありました。「1ドル100円時代!わが社としてこの荒波をどう乗り越えるか、若手社員に議論をさせて答申をまとめよ」ということのようです。

当時は「円高」の急激な進行が世の中を騒がせていました。私たちの部署は海外ビジネス(輸出)を担当していましたので、円高の進行は業績を押し下げることになる。これは大変だとA部長は考えた末、このプロジェクト発足を「思いついた」わけです。

早速、数名の若手社員が指名され、私もそこに運悪く入ってしまいました。B次長は「自由に議論して提案してくれ」と「丸投げ」です。

輸出にとって円高はマイナスだが、全社的な損益影響はどうなのか?私たちは真っ先にそのことについて調べたところ、何と「円高は全社的にはプラスである」ことを確認。

商品の原材料は輸入依存度が高いので、そちらのプラス効果が輸出売上へのマイナス効果を補って余りあるというわけです。

A部長の“思いつき”いや“肝いり”プロジェクトは僅か1週間で解散となり、その後しばらく「火の粉」は飛んで来なくなりました。

本書には、こうした思慮の浅い?上司たちにどう立ち向かったらよいかが、楽しく説かれています。今とは時代が違い過ぎる面は否めませんが、そんな上司に悩まされている方には参考になるかと。(集英社新書)