文部科学省がデジタルや脱炭素分野などに関わる理工系学部の新設や拡充を促すべく、学部再編に取り組む大学を財政支援する方針を固めたそうです。
目的は「日本経済の再生と国際競争力の強化」とのこと。
確かに、日本の1人当たりGDPは2000年には世界第2位でしたが、2021年は24位にまで落ち込んでいますから、なんとかしなければなりません。
かつては「技術立国」だとか「ニッポンのものづくり」といった言葉に表象されるように、工業技術分野で世界をリードしてきた日本。
残念ながら「アベノミクス」で株価ばかりに気をとられている間に、「ものづくり」は中国や韓国に追い越され、デジタル化の波には乗り遅れ、東日本大震災という未曽有の自然災害に見舞われ、コロナ禍も追い打ちをかける。
寺島実郎さんがよく「日本はこれから何でメシを食って行くのか今こそ真剣に考えるべき」とおっしゃっていますが、全くその通りだと思います。
そのための理系人材育成ということなのでしょうけれど、忘れてはいけないのは文系人材が担うであろうグランドデザインの重要性です。
たとえば、エアコンのリモコンには全く使わないボタンがたくさんついていますね。様々な運転モードや自動調節機能等々…。
それらは高度な技術でしょうけれど、人々の生活を便利で豊かなものにするかどうかは技術的な尺度とは全く関係ありません。
ITにせよ脱炭素にせよ高度な専門技術が必要なのはもちろんですが、肝心なのはそれをどんなコンセプトでどう活用してゆくのかという青写真を描くこと。
ハイレベルな理系人材を育成しても、彼ら彼女らが立つ舞台をどのように整え、どう活躍してもらうのかをデザインできる人材がいなければ、宝の持ち腐れになってしまいますから。